※道具とは、薬品&器具。(直接間接のもの全て)
♪ 髪にパーマ液が付くと、何が起きるのか…
パーマ液の第1剤が付いた髪は軟化(柔らかくなる)を始めます。この状態にロットを巻くと、その巻かれた力で髪は偏平化し、直毛がクセ毛のような断面形状(楕円形)になりカールの基を形成します。これをヘアスタイルに利用した技術がパーマです。
よって良い薬品とは、髪を丁度良く軟化させることを指しますが、髪条件は皆違うため そうは上手くはいかないのです。それを補うのが美容師の技術力(知識+応用技術)と、具体的な毛髪診断力です。
一方、薬品の能力は決まっているため、全ての髪条件をカバーすることはできません。ですから薬品の選択には美容師の毛髪診断が必要なため、お客様が薬品を選ぶことは無理ですし間違となります。
♪ ロットは何をする物なのか…
髪に物理的な力を加えて、断面形状を扁平化させる道具です。サイズの違いは物理的な力を加減調整するための物で、かかり具合は細いほど早く太いほど遅くなります。なおロットの能力は物理的な力だけなので、髪を傷める働きはありません。
※このロットの物理的な力を加減する能力を、テンションの違いとプロは表します。
♪ ロットサイズの長所と短所。
ロットサイズが太いと、かかり過ぎは起き難くなりますが、傷みは出易くなります。細いロットの場合は、扱い方を間違うとかかり過ぎが起き易くなりますが、傷みは出難くなります。なぜ傷みの程度に違いが出るのかと言うと、細いロットの方が早い時間(薬に髪が浸かる時間が短い)で目的の強さになるからです。
この辺りのバランスの取り方が具体化(解かれていないパーマ理論)すると、細いロットで特大のカールを作ることが可能になります。
その結果、求めるカールサイズを早期に調整し、根元を確実に動かし、傷みを小さく抑えることも可能になるのです。(従来型のパーマにはない考え方です)
しかし、この理屈が分からないと、カールサイズをセットのような感覚で求めるようになります。この流れをパーマとセットの理論混同といい、これを防ぐ具体例が、根元の調整で紹介する細いロットによる特大カールの作り方です。
そのため昔から(理論の違い)パーマのロットは細く、セットのカーラーは太いのですが、発明されたときに調整法が完成していたかは不明です。
♪ パーマのカールの求め方。
図のように、パーマのカールは最初が弱く、段々強くなりやがてロットと同じ太さのカールに到ります。ですから理論的に、細いロットで大きなカールを作ることが可能です。
(性質の違い)●因みにカールの特徴は、濡れると強く、乾くと弱く見えます。
♪ セットのカールの求め方。
パーマとは違い、図のように選んだカーラーのサイズが、カールサイズになります。途中のサイズを選ぶことは出来ず、若干でもしめっているとカールにはなりません。
(性質の違い)●因みにセットのカールの特徴は、濡れると取れてしまいます。
♪ パーマ用のカット。
カットで形を作るカット技術とは別に、パーマで変化する長さとボリュームを予測するカットが必要となります。そしてこの予測内容が形作りの質を高め、さらに持続性を陰で支えるもう一つの条件となります。
ただし、これは強さ調整が安定していることが条件で、この条件を満たしていれば、カットの順序はパーマの前でも後でもどちらでもよいことになります。
(現場は条件が色々あるため、この判断は美容師の経験値に委ねられる問題となります)
♪ ロットやピンが外れた状態で、確認できるかかり具合と性質の違い。
(髪に巻いた棒やピンを外した状態を、ロットアウトとピンアウトという)
ロットを外したロットアウトの根元に、カールの立ち上がりが見られます。この立ち上がりがロットで巻いたパーマの特徴となり、基本的にボリュームの得易いパーマになります。
ピンを外したピンアウトのカールは、根元が地肌に添うため、カールに立ち上がり感が小さいのです。この動きがピンパームの特徴となり、基本的にボリュームを抑えるパーマになります。
ピンアウトやロットアウトには、どんな意味があるのか… 観察をするとそこには目的のヘアスタイルを得ようとした、美容師さんの考え(施術内容)と、その考えが具体化(調整結果)した形(痕跡)であることがわかります。
もちろんパーマは終わっているので修正はできませんが、次回の修正案(宿題)として、どう改善するかと言う手がかりがしっかりと残っています。つまり、ロットアウトの表情には、形作りの最初の情報が含まれているわけです。
では、なぜ終わった後の状態を観察するのかというと、パーマの条件に「同じ」はないからです(調整を狂わせる不確定要素の存在)。この条件の違いが動きの違いになるため、毎回確認しないと調整と形の関連が把握できなくなるからです。
こう考えれば、ロットアウトが単なるパーマの終わりではない事が分かります。
♪ パーマ施術と調整プロセス。
(工程とその流れ)
パーマ液を塗布してから、ロットを巻くパーマが一般的なので、それに添った説明で進めます。(図はそれ以外の説明にも対応します)薬品の付いた髪にロットを巻いた後の作業は、テストカールです。
その動きの確認から薬品を再塗布するのか、塗らずに放置するのかを選択して、時間が来たら二回目のテストカールを行います。この確認で目的の強さになっていれば、2液の塗布(酸化と言う)をすると楕円形のまま髪は硬くなり、カールの基はカールに固定されます。なお、この確認作業は、スムーズでもた付きのない2回程度で終わる調整が理想です。
◇個人的にパーマを楽しむ方は、図の流れを理解し安全に利用してください。
♪ 事故を起こさない薬品の扱い方。
この問題を、お料理の塩分に例えて説明します。
●塩分の多い濃い塩味を選択するのか…
●塩分を少し控えた薄味を選択するのか…
と同じ問題に例えることが可能です。つまり塩分を控える必要のある人に、塩分の多い濃い塩味は毒になります。これを続けるとやがて病気は重くなり、自ら病気の悪化を招くことになります。
しかし、健康な人では長期間続けない限り、大きな問題にはなりません。
これを健康な髪と傷んだ髪に当てはめると、この事故を起こさない薬品の扱い方がおのずと分かり、事故の起き難い安全な薬品扱いが完成します。あとは個人差を探り許容範囲を見つけ出せば、より安全性を高く保つことが可能になります。もちろんこれには美容師の経験値が必要で、さらにこのデータを客観的に正確に残す高機能なカルテも必要です。この両者をすり合わせて判断することが美容師の仕事で、これが出来るようになると事故を未然に防ぐ能力も高くなります。
このように事故は薬品の良し悪しだけで防げる問題ではなく、いくつかの要素
(髪条件&薬品との相性&施術内容)が重なって起きるため、事故に至る原因の説明
は簡単ではありません。見えない所で起きる化学反応を理解することは、基本的に難しいことなので、だからこそ薬品扱いに油断は禁物なのです。
協会は道具の良し悪しよりも、この意識の大切さを進言いたします。
Wikipedia (ウィキペディア) にこのような記述があります。
薬剤の長所を最大限に生かしながらダメージは最小に留める、これは技術者の経験と知識と良心の問題であり、それこそが理美容師に求められる技術の本質なのである。と、至極まっとうな見解が述べられています。
しかし、果たしてこれが理美容業界でどの程度、理解し提供されているのか…?
※興味のある方はパーマネントウェーブで検索し、Wikipediaを参照してみてください。
当協会は、人間の知恵がこの問題を最小に留める鍵だと考えます。よって道具(薬品&器具)の変更だけで、副作用(ダメージ)の軽減は得られないと確信します。