(強さをグラデーション化する基本技術)
§ 強さの段階的調整とは…
写真のように、強さを徐々に変える調整を指します。このようなかかり具合を土台に持つパーマは、直毛とパーマを違和感なくつなぐ効果を生み出します。
もちろんこの調整には美容師の技量が必要で、道具を変えるだけでは得ることができません。そのため道具扱いに不備があったり、調整に曖昧さがあるとパーマ部と直毛部のつながりに支障が出て、それを直す余分な作業が必要になります。
つまり、この調整自体が形の一部であり、楽な形作りの土台でもあり、無駄な作業を省く調整でもあるのです。ですからそれを理解する美容師さんは、ロットアウトの確認を怠りません。
これが豆知識にある、ピン&ロットアウトがパーマの終わりではない理由です。さらにこの時の強さがハンドブロー雰囲気(毛先の動き方などの表情の違い)を決めるため、調整の全てが形作りの最初のデータとなるわけです。
なお、この写真の段階的調整が一番多用される基本形であり、美容師が体得しなければならない基本技術の一つとなります。
§ では、その多用される調整内容を簡単に確認してみます。
ハンドブローを見ると、パーマの上部の動きは躍動的で、徐々に弱くしてエリ足の直毛に自然につないでいます。
その強さの違いを、回転数に置き換えて表現したものが下の写真です。
※このような動きを、予測調整するのが美容師の仕事です。
意識的に行った強さ調整は、写真のようにロットアウトの形で残ります。同時にその動きの計算が「調整した手応え」となります。そもそも目的があってこのような調整をするわけですから、その手応えを確認するのは当たり前のことなのです。しかし、手応えのない施術(変化が分からない、不安定なかかり具合など)が普通になると、確認する意味がないためロットアウトを見なくなります。
こうなると調整するという自覚自体が希薄になり、不安定な調整にも疑問がなくなり、いつの間にかヤマ勘の調整を始めます。しかも困ったことにこのヤマ勘を個人技と錯覚する人があり、いつの間にかレベルが低下してしまうのです。
この様な状態が長年悪循環化して、従来のパーマ技術は大きな閉塞感と同時に急速なレベル低下を招きました。
※いつからパーマ技術のレベル低下は始まったのか…
§ では、上部からロットアウトとすすぎ後を観察してみます。
ロットアウトをすすぐと、似ても似つかぬ雰囲気に変わります。弱いパーマしか行わない美容師さんが見ると、かかり過ぎのチリチリのパーマに見えるのかもしれません。ところが紹介したハンドブローのかかり具合はこの状態で、これからドライヤーで水気を飛ばし、手グシで成形したものなのです。
しかし、従来的なパーマの常識(経験値)ではハンドブローが出来ないため、現美容師さんの多くが不思議に感じるものの、中々信じるには至りません。
※ブローで形を作る今までの常識と、大きく違うわけですから仕方がありませんね!
見方を変えると動きのあるパーマで、後の楽さと持ちの良さを要望するお客様のニーズにはぴったりのパーマ性能となります。
§ では、ロットアウトの角度を変えて調整の内容を確認します。
従来的なパーマに慣れた美容師さんが、このパーマのかかり具合をどう評価するのか分かりませんが、このロットアウトもセットのように見えませんか!
これをすすいで、毛先をチェックカットしてから、ハンドブローに入りました。
※強さに左右されない納まりの良さも、パーマの大切な性能です。
§ では、段階的調整の範囲を後と、前(耳の上部)で確認してみます。
※いかがでしょうか、前も後も同様の調整がしてありますね!
前述したようにこの調整は、パーマをダイレクトにスタイリングするのが目的ですから、この内容がそのまま目的の形に変わります。
と言うことは、写真のように顔側と後頭部側でも同じ調整が必要となります。この動きの確認から調整が偶然ではなく計画的であることが分かります。
§ では、ロットアウト中の風景からワインドを紹介します。
もうお分かりのように、細いロットで大きなカールが作れるため、ワインドはご覧のような内容です。ロットは全て同じサイズですが、調整したカールサイズはロットより大きくなっていることがわかります。
このように美容師の判断で目的の強さは調整できるわけですから、弱過ぎて直ぐ取れるパーマも、強過ぎてチリチリになるパーマも美容師の責任となります。
もちろんこの判断には傷みの調整も入ります。
§ では、ロットアウト中の写真でカールサイズを確認してみます。
巻いたロットは7ミリで、調整されたカールサイズは約23ミリです。
これをロットサイズと比較すると、3倍以上の大きさであることがわかります。
このことから、強さの調整をロットサイズでしていないことがわかります。
(理屈は豆知識で述べた通りです)
上から見たロット配列がふぞろいで雑に見えるのは、生え方に合わせた巻き方をしているからです。生え方を利用してワインドを行うと、写真のようにロットは綺麗にならばずランダムな配列になります。早く巻くことを優先するとロットは綺麗にならぶのですが、生え方を利用するワインドはできなくなります。
ピンパームでは根元の動きを利用して巻くのが普通のため、それに準じてロットを巻くと必然的にこのような配列になります。
※ワインドにも色々な方法のあることがわかります。
§ では、最後にハンドブローを紹介します。
すすぎ後の強い動きは、ハンドブロー後に軽快な躍動感に変わりました。
このモデルさんの髪には弱い癖があるため、耳の下とエリ足はかけていません。
そのためこのパーマの調整自体がつなぎであり、作品そのものを兼ねるため、目的通りの強さの段階的調整が要求される施術となります。
形については好き嫌い、似合う似合わないなど、ひとまとめに言葉で語れない問題が含まれるため省きまが、この強さでも収まりのいいことがわかりますね!
※格好の良し悪しは、前述するように主にカット技術の問題となります。
この作品に使用した主なパーマの調整内容。
◆詳細な強さの段階的調整。
◆躍動的にかけながら納まりの良いパーマ。(基本調整の成果)
◆強さ、根元、傷みを調整する、基本調整の実施。
◆躍動的な動きを出す強いパーマ。
◆ウェットとドライの髪の表情の予測。(表情の違いを読む技術)
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