(強さを2段階に分ける基本技術)
§ このセミロングは、持続性の追跡調査で紹介した作品です。
※この形も水気を飛ばしてから、手グシでスタイリングをしたハンドブローです。
写真のように強いパーマほど長さの縮み方は大きく、縮み分がボリュームに変わります。この変化を予測しないとパーマでは形作りが出来ないため、昔からロングのパーマは難しいと言われます。そこで縮み方を確認するため、パーマを行う前にこの作品のイメージスケッチをしておきます。後でこのスケッチとハンドブローを比較すれば、調整したカットの長さや、強さの調整が適切であったかを知る(パーマ後の髪の長さが予測の範囲に収まる)手がかりとなるからです。
その結果、イメージした形の再現性(強さの調整力)はスケッチの70%程度の出来となり、何とか合格点を得ることが出来たと考えます。このイメージングは全ての作品作りに必要な美容師の能力を現し、さらにパーマを調整して作り出した形なのか、偶然そうなったのかを嗅ぎ分ける物差しともなります。
§ では、このパーマの詳細を紹介します。
先ずは、横から見た各長さの変化を確認します。
しかし、カット後とパーマ後では、随分髪の長さに違いが出るものですね!
長い髪に強いパーマをかけると、このように長さが縮み、それがボリュームに変化するわけです。ところが弱いパーマに慣れた美容師さんは、この縮み具合の予測ができず、さらにこの強さがハンドブローでどの程度ゆるむかも分からなくなります。こうなってしまった美容師さんは、自分の持つ狭い経験値でこの強さの判断を行うため、チリチリの強いだけのパーマに見えるようです。
しかし、ハンドブローのカールはフワ〜ンとした動きで、納まりも悪くなく、傷んだ感じもありません。巻いたロットは7ミリと細いのですが、不思議なことにチリチリにはなっていませんね! これも新たなパーマ技術の効果なのですが、理論が解かれていないため、マジックに見えるようです。
※基本調整が機能していれば、強いかかり具合でも簡単に納まり形になるのです。
パーマの前に描いたスケッチは、この予測の精度をはかる物差しになるのですが、このハンドブローとすすぎ後(ドライ&ウェットの動きの違い)の髪の縮み方から、この程度に縮むことを予測(経験値)していたことがわかります。
そんな内容を持つ強いパーマ施術を利用して、持続性の確認を行いました。
§ では、長さの変化を比較してみます。
カット後。 すすぎ後&ロットアウト後。 ハンドブロー後。
カット時の長さとスリムさは、短さと豊かなボリュームに変わりました。
このボリュームの変化は、強さの違い、長さの違い、カットの内容でも変わるため、パーマ後の変化の予測は難しいのです。これに不安定な強さ調整が加わると、縮み方とボリュームの予測は全く出来なくなります。
このようにパーマの形作りにはイメージングという予測技術が必要で、これが実行できると、パーマの前後に関係なくカットが行えるようになります。
§ 上から見た各施術プロセス。
では、この強いパーマで、スライス痕の確認をしてみます。
上段のハンドブロー後、すすぎ後 A、B にもスライス痕はありません。
もちろん面倒な小道具は使いません。
ハンドブロー後。 すすぎ後A。 すすぎ後B。
上から見たロットアウトのカールが、ベース幅位に大きいサイズであることに気付かれましたでしょうか…(ここ以外の部分は強いパーマです)よく見ると単に強いだけのパーマではなく、さりげなく用意周到にこんな調整がされているわけです。しかも同じサイズのロットで強さの調整がされています。
※カーラー比較から、上部のカールサイズは緑色の26ミリ前後あるようです。
§ 前から見た各プロセス。
パーマのボリュームの変化が、一番よく現れる所がこの正面から見た写真です。
しかし、ハンドブローのボリュームを、すすぎからイメージするのは難しく、ロットアウトからハンドブローのボリュームを予測することはさらに困難です。
何故なら、仮に同じ強さにかけることができたとしても髪条件(髪質&状態)の違いでこのボリュームの出方(=縮み方)は変わってしまうからです。それがウェットとドライの違いでさらに変化するためこの予測は難しいのです。
しかし、安定した強さ調整が出来るようになると、この施術のようにある程度の精度で乾いた後のボリュームが予測できるようになります。このことから予測を養うには、強さの安定調整を身に付けることが条件であることがわかります。
なお、予測という技術を確認するのに、強いパーマは分かり易い素材です。
§ 再度、カールサイズの違いを確認しておきます。
この様に2つ(フロント&トップ=弱く、それ以外は強いパーマ)の強さを使い分ける調整を、強さの計画的変更と言います。単純に弱いパーマと強いパーマにかけ分けるだけのことですが、どうすれば同じロットでこのような調整が可能になるのか… もちろん通常通りに巻き、通常通りに外します。(面倒なことは一切しない)
これも新たなパーマ技術の特徴で、この作品の土台の一部となっています。
§ この落書きは、パーマに入る前に描いた仕上がりのスケッチです。
※ハンドブロー後のスライス痕も、おまけに確認しておきます。
このようにイメージスケッチしておくと、何が良かったのか、何が悪かったのか、どこが問題だったのかなどの原因追及に役立ちます。
または自分の想像したイメージと、結果がどの程度違ったのかなどの確認も容易になります。また、自分の調整力を客観的に確認することも可能になります。
今回の目標達成率(デザイン性&実用性)は70点弱位で、減点は顔の周りのギザギザにしたい所が動き過ぎたことと、全体の動きに軽やかさが出なかったことです。こんなことから自分の行った施術の問題点を探ることが可能になるため、その意味で、作品のスケッチ化は自分磨きに有効な手段となります。
もちろん自分は誤魔化せなくなりますが、その代わりに自分を改善するエネルギーが高まります。なお、この数字はイメージの数値化につながります。
この作品に使用した主なパーマの調整内容。
◆髪の長さの縮みを予測した形のイメージング。
◆上部と下部の、強さの計画的変更。
◆強さ、根元、傷みを調整する、基本調整の実施。
◆持続性に配慮した強さ調整。(傷みを増やさず強くすること)
◆ウェットとドライの髪の表情の予測。(表情の違いを読む技術)
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