♪ 形の基礎工事、それが根元の動き。
(家を建てる土台と同じ役目!)
●パーマが終わり、ロット(棒)を外した状態を、
ロットアウトといいます。
ヘアスタイルを左右する条件は、主に髪質(太さ、硬さ、毛量、生え方)などの違いと、頭形(頭寸、形状)などの違いです。さらに髪の状態(傷みの有無、傷みの程度)も加わるため、前回と同じようにするには根元を適切に動かす理論と、経験値を基にした美容師の具体的な調整作業が必要です。なお日本人の頭形を考慮すると、殆どのケースでこの根元の調整作業(土台の工事)は必須項目となります。
ピンクの丸印を付けた、カールの根元の動きを観察してみます。すると絵にかいたように、根元の生え方に逆らった動きであることがわかります!
この角度で見ると、その動きがとても良く分かります。根元にボリュームが欲しい場合は、こんなふうに動かします。
サイドも潰れずに、カール形状も維持されています。多くの場合ここにボリュームは要らないのですが、この方には必要な調整となります。
生え方に逆らった巻き方をすると、根元に巻き痕が強く残る場合があります。これをスライス痕と言います。
しかしこのパーマには、そのスライス痕(現象)が残っていません。一般的に小道具で防ぐ場合が多いのですが、調整がされているため、痕跡は殆ど残らないのです。
このようにロットアウトや、すすいだ後にも、調整の優劣を知らせる動きがあるため、観察は大切なのです。
♪ カールの立ち上がりは根元の動いた証。
ロットを外したカールは濡れているのですが、その重さに負けず根元は立ち上がりクルッとした表情を保っています。そのため何気なく見てしまうと、セットに見間違えてしまうのです。なお、この髪の最長部は18センチ前後です。
(カルテより確認)
では、この特大カールのロットアウトを、実際の動画で確認してみます。
パーマ後のロットを外している状態ですが、多くの方がセットに間違えます。
このような形状のカールがパーマで作れると、このまま形作りに入ることが可能になります。つまりパーマのかかり具合を、セットのような表情に調整することが出来れば、手グシによる形作りの可能性が高くなるのです。
なお、写真のカールは基本的に弱いパーマで、持続は1ヶ月程度となります。
(パーマの持ちは、髪質や毛量や最初の強さやその人の感じ方で大きく変化します)
残念ながら従来のパーマ技術で、このような特大のカールを調整することは出来ません。また強さの調整で触れたように、太いロットを巻いた場合は、写真のように根元を動かすことは出来ません。(根元の動きは持続性とも関わります)
かと言って、根元を動かすことだけに気を奪われると、スライス痕やゴム痕という施術痕(傷痕)を根元に残す場合があるのです。そのため、この根元の調整もバランス感覚が必要な作業となります。しかし、新たなパーマ技術はこの原因を突き止め対応策を講じたため、施術痕は殆ど出さずに済むようになりました。
※スライス痕、ゴム痕の詳細は、ロットの跡、ゴムの跡(安全性関連)にあります。
(根元の動きは形を決める条件の一つ)
♪ 根元の動きの確認は、美容師の仕事。
(薬品の力と物理的な力をバランスさせること)
パーマをダイレクトスタイリングする条件の一つが、この根元の調整力です。
ただし安全性関連(パーマのかかり具合は、なぜ違うのか)で紹介すように、調整を不安定にする理由(不確定要素)は複数あるため、この動きを確実にするには、髪の生え方を読む美容師の観察力や経験値は欠かせません。
その判断になる指針が「解かれていない理論」で、目的通りに動いた根元は、巻き方の正しさと反応の適正さを示す具体的な手応えとなります。
なお、この根元の動きは美容師の考えた形作りが具体化したものとなります。
目的の形と髪条件を踏まえることが、根元をどの程度動かすかという条件になります。しかし、この動きは紹介した順調なテスト(動きの見えるテストカール)と連動している部分があるため、テストが安定しないと得られません。なお、この動きを任意に変更する技を得たい方には、有料会員の登録をすすめします。